ユーザーインタビュー - Vol.1
株式会社アセンション代表 青木 三六 氏
本シリーズはドローン・カメラを活用するクリエイター/ビジネス事業者の生の声をお届けするインタビュー企画です。
記念すべき第一回は、株式会社アセンション代表の青木三六氏にドローンを使用した業務を行うに至ったバックグラウンドやそのメリット、使用機材などについてインタビューさせて頂きました。
■まずは自己紹介を簡単にお願いします。
株式会社アセンション代表の青木です。株式会社アセンションは、ドローンを使ったソリューションを提供している会社で、クリエイティブ部門と産業部門があります。
私自身は前の会社を退職し、独立する間、Rave Project(※1)チームでCM撮影など外部アシスタントとして経験を積みました。それは今に活きている部分だと思っています。
その後独立をし、「株式会社アセンション」を設立しました。
現在はCMなどのクリエイティブワークをはじめ、太陽光発電メンテナンス技師資格や准橋梁点検技術者の資格も保持し、実務経験を多く積んでいます。
CMなど映像の面でも、産業に関しても、最前線で実務をやっている方ではないかと自負しています。
※1…ドローン空撮の第一人者である請川博一氏の設立したドローン空撮会社。CM撮影や映画撮影など実績は多岐に渡る。
■ドローンをはじめたきっかけを教えてください。
独立する前に働いていた会社がツーリズム系の企画制作会社で、自治体のPRなどの映像を制作して、観光振興の手伝いを行っていました。ドローンを使って新たな観光資源の掘り起こしをしてみるのも面白いと思い、2012年に初めて空撮をしました。2016年にその会社を辞めて独立するまでは、空撮をやっていた感じです。
当時はまだドローンでの映像というのは珍しく、SNSなどで活発に情報交換をしたりしていましたね。
ちなみに当初使っていた機体は、XAG(※2)というメーカーのドローンでした。何も分からないまま飛ばして、すぐに墜落してしまったんですけど。(笑)
※2…中国のドローンメーカー。現在は農薬散布がメインになっている。日本法人名は『XAIRCRAFT JAPAN』。
■ドローンを使用している業務はなんですか?
CMやテレビ番組の映像制作から橋梁点検や太陽光発電所、外壁の点検まで、幅広く業務に使用しています。特に産業分野では現在、橋梁点検をメインとしており、これまでに100橋以上の点検をやってきました。
人がなかなか行けない場所にドローンを飛ばして点検するための支援というのを行っています。
■ドローンの使用により、それらの業務はどのように良くなりましたか?
ドローンを始めたきっかけが、人が見えなかった景色や新たな魅力を発信したいということだったので、“ドローンで見える景色”というのは色んな映像作品の中で、エッセンスとして有効なんじゃないかなと思っています。今はドローンの映像が当たり前の時代になりましたよね。映像に対して新しい味付けができるっていうのが空撮の最大の魅力でしょう。
実機ヘリよりもお手軽だし、もっとダイナミックに寄って撮りたいっていう場面にも強いところがドローンのいいところですよね。
余談ですが、ブラシレスモーターのジンバルが出てきたことが、空撮では一番革命的な出来事だったのではないかと思っています。
産業分野も同じで、人が行けなかったり、見られなかったりする場所にドローンで行けるようになったっていうのは非常に大きいと感じています。
人が行って作業すると怪我してしまうような危ない場所でも、代わりに機械が行けるようになったというのは大きいですよね。
■主な使用ドローンはなんですか?またその理由やお気に入りポイントを教えてください。
橋梁点検ではSkydio 2(アメリカ)(※3)をメインに使用しています。
やはりなんといっても安心して使えます。ぶつかりにくいですし、狭いところに入っていけるので。今までのドローンではできなかったことができる機体だなと感じています。
また、ジンバルが上向きになるので、点検には適していますね。
映像に関していうともっぱらDJI製品(中国)ですね。たまにAutel(中国)も使用しています。
メインはDJIのInspire 2を使用していますが、Mavic 2シリーズは完成された機体だなあと思います。操縦フィーリングも良いですしね。
続くMavic 3とソニーのAirpeak S1(※4)にも期待しています。
…といったように、ドローンで何をするか・何を見たいかによるので、適材適所といった感じで各ドローンを使い分けています。
※3…アメリカのSkydio社から生まれた、非GPS環境下での自律飛行が可能なドローン。国内では現在未販売だが、NTTドコモ社がレンタルサービスとして展開している。
※4…今年9月に発表されたSONY製の空撮用ドローン。αシリーズのカメラが搭載できる機体だと話題に。
■主な使用周辺機器はありますか?もしあればおすすめやお気に入りを教えてください。
HAZARD4のバッグを愛用しています。カメラバッグを取り扱っているメーカーなので、生地がしっかりしていて、中に仕切りがあるため使い勝手も非常に良くてお気に入りです。リュックタイプなので、両手が自由に利くところも便利です。
実際に紛争地域に派遣される部隊やカメラマンも使っているブランドで、ヘビーデューティーな使用にも耐える頑丈さが気に入っています。
HAZARD4 HP:https://hazard4.jp/
https://hazard4.jp/pillbox-optics-shell-pack/ (シェルパック)
https://hazard4.jp/h4-evc-pbh/ (スリングパック)
https://hazard4.jp/h4-bkp-grl-blk/ (モールフォトパック)
あとは、ATOMOSのモニターを使用しています。請川(博一)さんの受け売りなのですが、「プロの現場にはプロの機材を持っていかなくてはならない」という言葉通り、こういったフィールドモニターなどは、値段よりもどんな現場にも対応できる品質や機能を重視して導入しています。
モニターは画質と明るさが一番大事なのですが、ドローンではもう一点、アウトプットの端子の形式がどれだけあるかというところが大切です。
というのも、HDMIが付いているモニターは多くありますが、映像系の制作の現場ではSDI端子があるモニターが必須なんです。
ATOMOSのモニター上位機種には出力アウトプットにSDIがついているので、プロ用モニターとして重宝しています。
こういったものも今後UAVOOMで取り扱ってくれたら個人的に嬉しいですね。(笑)
ATOMOS HP:https://www.atomos-japan.com/
■将来のドローンや周辺機器に期待することはありますか?
ソニーのAirpeak S1のように、いろんなカメラをペイロードとして載せられる機体の製品レベルの高いものがたくさん出てほしいですね。一眼レフを載せられて、運用面でもっとシームレスに動かせる空撮機材が出てきてくれると嬉しいです。たとえば準備から飛ばすまでの時間がもっと短縮できるとか、飛行時間が長いとか、飛行オペレートシステムとカメラオペレートシステムがいつでもトラブルなく動作するとかですね。それがふたりで動かせるぐらいのサイズ感だと最高です。
産業系でいうと、Skydio 2はVisual SLAM(※5)を使って飛んでいますが、それがレーザーや赤外線のスラムになれば面白いなあと思いますね。Visual SLAMだとどうしても暗いところや雨の中は飛べないので、それが赤外線とか小さめのライダーになっていったら敵なしだと思います。
GPSに頼らない自立飛行ができるものがもっとたくさん出てきたら面白いなあと思います。
撮るもの――カメラ自体はたくさんあるので、それをその(撮影)場所までどう安全に運ぶかがドローンの使命だと思っています。
※5…カメラで撮影した映像から自らの位置姿勢と周囲の三次元状況を同時に推定する技術
株式会社アセンション代表 青木 三六
2012年から空撮を始め、請川博一氏率いるRave ProjectチームでCM撮影などのアシスタントとして経験を積み、2016年に株式会社アセンションを設立。ドローンを使ったソリューションとしてクリエイティブ部門と産業部門の2部門を持ち、映像撮影から点検業務まで、様々なドローン事業に携わる。
クリエイティブ部門HP:https://dronevista.jp/
産業部門HP:https://dronespection.jp/