写真や動画を撮影する上で重要な知識の一つに「被写界深度」というものがあります。
被写界深度は、写真・動画において表現に大きな影響を与える「ボケ」に深く関わるものであり、被写界深度の範囲の広さによって、写真の印象は大きく変わります。
被写界深度を理解し、コントロールすることで、より意図的な表現が可能になるように、この「被写界深度」について掘り下げていきましょう。
被写界深度とは
被写界深度(DOF: Depth of Field)は、カメラの設定やレンズの特性によって、ピントが合っているように見える範囲のことを意味します。
この範囲が広い場合を「被写界深度が深い」と表現し、狭い場合を「被写界深度が浅い」と表現します。
被写界深度を変更することで、撮影者は写真の印象を大きく変えることが可能です。
被写界深度が深いとどうなる?
被写界深度が深いと、遠くの背景から手前の被写体までピントが合い鮮明に写り込みます。これを「パンフォーカス」とも言います。
パンフォーカスを利用すると、風景写真において遠くの山々から近くの花まで全てがピントの合った写真を撮ることができ、全体の情報量が多い写真を撮影できます。
被写界深度が深い方がいい撮影シチュエーション
被写界深度が深い状態は、風景写真や建築写真など、画面全体に細かいディテールを残したい場合に適しています。
また、グループでの写真撮影では前列から後列までの人物を全員ピントで捉えたいため、被写界深度を深くする必要があります。この深い被写界深度を得るために、レンズの絞りをある程度絞る操作が有効です。
被写界深度が浅いとどうなる?
被写界深度が浅い状態では、ピントが合っている範囲が非常に限られ、その結果、背景が大きくボケます。
このボケ効果によって被写体が際立ち、撮影者の意図したポイントに視覚的な注意が集まりやすくなります。
特に、ポートレート撮影などでは被写体の顔に注目させたい場合、被写界深度を浅くすると効果的です。
被写界深度が浅い方がいい撮影シチュエーション
ポートレートやマクロ撮影、静物撮影など、被写体に注目させたいときに被写界深度を浅くすると良いでしょう。
背景を意図的にボケさせることで、被写体を強調し、写真に深みや美しさを与えることができます。
さらに、撮影する被写体と背景との距離を取ることで、より強いボケ効果を得ることが可能です。
被写界深度は何によって変化するのか
被写界深度をコントロールするには、「レンズの絞り値」「焦点距離」そして「被写体と撮影距離」の3つの主要な要素を理解する必要があります。
これらの要素を変更することで、写真における被写界深度を意図的に調整できます。
レンズの絞り値(f値)
絞り値が小さい(f値が小さい)ほど、レンズの開口部が大きく開き被写界深度が浅くなり、背景のボケが強くなります。
逆に、絞り値が大きい(f値が大きい)と開口部が狭まり、被写界深度が深くなり奥までピントが合ったシャープな画になります。
しかし、深い被写界深度を求めて絞りすぎると、光の回折現象が発生し、「小絞りボケ」と呼ばれる画質の低下が起こり得るため、カメラ・レンズの特性を見極め最も高い解像度が得られる絞り値を理解しておくことが重要です。
レンズの焦点距離
焦点距離が長いレンズでは被写界深度が浅くなりやすく、短い焦点距離のレンズでは被写界深度が深くなります。ズームレンズを使用する場合、焦点距離を長くすることで、簡単に被写界深度を浅くし背景をぼかすことができます。
被写体との撮影距離
被写体からカメラまでの距離が近いほど被写界深度は浅くなります。特にマクロ撮影においては、この原理が顕著に現れます。被写体との距離を変えることで、撮影者は被写界深度を微妙に調節することができます。
ボケを操り撮影をレベルアップしよう!
ボケ(背景のぼやけ)を利用することで写真に芸術性を加えることができます。
被写界深度のコントロールは、表現力豊かな写真を撮る上で欠かせないテクニックです。
絞り値の調整、レンズ選び、撮影距離の検討などを行いながら、思い描いたイメージに近づける撮影を心がけましょう。