ロングシャッターでの写真撮影や動画撮影で必須とも言えるカメラアクセサリー「NDフィルター」。
初心者にはやや扱いが難しいNDフィルターですが、効果と使い所をきちんと理解して活用できれば写真/映像のクオリティーと表現の幅がレベルアップすることは間違いありません。
今回はそんなNDフィルターの基本的知識、種類、使用した時の効果の作例をご紹介したいと思います。
NDフィルターとは?
NDとはNeutral Density(ニュートラル・デンシティー)の略で中立な濃度という意味を持ちます。
カメラレンズの先端に装着することで、入ってくる光の量を調節できる、サングラスのような役割を果たすアクセサリーです。
NDフィルターの種類
NDフィルターは、ND4、ND8、ND16のようにNDの後に数字がついた名称でバリエーションが存在し、この数字は光をどれくらい抑えることができるかを表しています。数字が大きければ大きいほど、減光効果が高いことを表します。
また、ND〇〇という表現の他にも、2stop、6stopのようにストップ値(絞り段数)により表現される場合もあります。
下記は減光効果を表すそれぞれの表現方法の対応表です。
種類 | ND4 | ND8 | ND16 | ND32 | ND64 | ND1000 |
---|---|---|---|---|---|---|
光量 | 1/4 | 1/8 | 1/16 | 1/32 | 1/64 | 1/1000 |
絞り段数 | 2段 | 3段 | 4段 | 5段 | 6段 | 10段 |
透過率 | 50% | 25% | 12.5% | 6.25% | 3.12% | 0.19% |
一枚のフィルターで一つの効果がある単一フィルターと、回転させて減光効果を変化させることができる可変フィルターがあり、可変式は1枚で様々な撮影環境に対応でき便利ですが、構造上ケラレやムラが発生しやすいというデメリットがあります。
NDフィルターの効果
NDフィルターは、シャッタースピードをコントロールするために使用され、使用した場合シャッタースピードがどの程度遅くなるのかは下の表から求めることができます。
絞り段数 | 2段 | 3段 | 4段 | 5段 | 6段 |
---|---|---|---|---|---|
NDフィルターなし | ND4 | ND8 | ND16 | ND32 | ND64 |
1/4000秒 | 1/1000秒 | 1/500秒 | 1/250秒 | 1/125秒 | 1/60秒 |
1/2000秒 | 1/500秒 | 1/250秒 | 1/125秒 | 1/60秒 | 1/30秒 |
1/1000秒 | 1/250秒 | 1/125秒 | 1/60秒 | 1/30秒 | 1/15秒 |
1/500秒 | 1/125秒 | 1/60秒 | 1/30秒 | 1/15秒 | 1/8秒 |
1/250秒 | 1/60秒 | 1/30秒 | 1/15秒 | 1/8秒 | 1/4秒 |
1/125秒 | 1/30秒 | 1/15秒 | 1/8秒 | 1/4秒 | 1/2秒 |
1/60秒 | 1/15秒 | 1/8秒 | 1/4秒 | 1/2秒 | 1秒 |
1/30秒 | 1/8秒 | 1/4秒 | 1/2秒 | 1秒 | 2秒 |
1/15秒 | 1/4秒 | 1/2秒 | 1秒 | 2秒 | 4秒 |
1/8秒 | 1/2秒 | 1秒 | 2秒 | 4秒 | 8秒 |
1/4秒 | 1秒 | 2秒 | 4秒 | 8秒 | 16秒 |
1/2秒 | 2秒 | 4秒 | 8秒 | 16秒 | 32秒 |
写真撮影でNDフィルターを使用すると、ロングシャッターにより、水や雲の流れ、光の軌跡など目に見えない時間の経過を写しとることができ、表現の幅がグッと広がります。
▼ND64フィルター使用/ISO100/EV0/F7/SS30
特に動画撮影でNDフィルターが必須である理由
静止画撮影の場合、光の軌跡や水の滑らかな流れを表現したいような場合を除いて、写真がブレないようにシャッタースピードを上げることは普通ですが、動画に関してはそうもいきません。
シャッタースピードを上げる障壁になるのが、動画撮影における基本の一つである「フレームレート」と「シャッタースピード」の関係です。
そもそも、動画は静止画の連続であり、フレームレートとは動画1秒毎に何枚のフレーム(静止画)を含めるかを表す値です。
動画撮影する時の適切なシャッタースピードは、一般的にフレームレートの2倍とされています。例えば、30fpsなら1/60、24fpsなら1/48、と言った具合です。
程よくブレを発生させることで、滑らかな映像になり、より自然に見える、というのが動画撮影の基本的な考え方です。
しかしながら、晴れた日中や明るい環境下で適正露出で撮影をしようとすると、シャッタースピードを上げないと露出オーバーになってしまうという状況に陥ります。
そこで必要になるのが、レンズに入る光量を減少させ、適切なシャッタースピードで適正露出が得られるようにしてくれる「NDフィルター」なのです。
下の動画は、日中に「NDなし」「NDなし(適正露出)」「NDあり(適正露出)」で撮影したそれぞれの動画です。
▼24FPS × 1/48秒 × NDフィルターなし(露出オーバー)
▼24FPS × 1/8333秒 × NDフィルターなし(適正露出)
▼24FPS × 1/48秒 × ND64 フィルター(適正露出)
シャッタースピードを上げて適正露出にした動画(真ん中)はパラパラとした不自然な映像になっているのに比べて、NDフィルターをつけて適切なシャッタースピードで撮った一番下の動画は適度な残像感によって自然な映像になっています。
NDフィルターは高品質なものを使う
NDフィルターは悪い言い方をすればレンズの前に本来いらないガラス板があるようなものですので、品質の低いフィルターを使用すると写真/動画の写りに悪影響を与えかねません。
PolarProのようなフィルターをメインに扱うブランドの高品質なフィルターは、業界をリードする色再現と色精度で影響を最小限にしつつ意図した効果をもたらしてくれます。
カメラ用、GoPro用、iPhone用、ドローン用と様々な撮影ギアに対応した専用フィルターが用意されていますので、現在の写真/映像を一歩レベルアップさせたい人は、NDフィルターという選択肢も検討してみてください。